V-Strom650におけるフロントフォークのカートリッジ化について、自分が知っている方法は3つだ。
その1:スクーデリアオクムラに改造依頼する。
その2:テクニクスに改造依頼する。
その3:マトリスカートリッジキットをブチ込む。
その1と2は引き受けてもらえるか不明だが、引き受けてもらえれば、体格、技量、好みに合わせてセッティングしてもらえる。ただし、フォークや車両をショップに持ち込む必要がある。また、ノーマルに戻すのは不可あるいは、可能でも費用がかかる。
その3は自分でフォークメンテができるなら、比較的ローコストでカートリッジ化できる。ノーマルに戻すのも可能。ただし、欧米人の体格に合わせたセッティングである可能性が高く、好みに合わない可能性も高い。
この選択肢の中から3を選択。
内容物は、カートリッジアッシー2、スプリング2、フォークオイル1ℓ、取説類。
カートリッジは、大部分がアルミで作られており非常に軽量。フォークキャップのロックナット(嫌がらせの二面幅16mm)までもがアルミ製。ただし、シリンダーやスプリングシートは鉄の方が安心感があるるが…
カートリッジは、減衰力調整が圧側のみ可能なものと、伸び側のみが可能なものが1本ずつとなっている。プリロード調整も可能。
ダンパーロッドには、潤滑系?の表面処理が施されており、動きがスムーズでガタも僅か。TS125Rとは大違い。
組付けにあたり、いくつか物品を入手。
造形美なフォークキャップを傷つけないための、テクニクス製プラスチックフォークキャップレンチ32mm。
エア抜きを楽するための、テクニクス製ブリーディングロッド。
フォークキャップロックナットを傷つけないための、IPS製ソフトタッチウォータ。
せっかくだから、広島高潤フォークオイル5W。
ガスケット2枚。
役者は揃ったので、組込み開始。
まず、ノーマルの乗車1Gでのフォーク沈み量を測定しておくと、約31mm。
組込みにあたり、ノーマルのスプリング、カラー、フォークキャップ等を取外す必要があるが、自分的に信用ならないイタリア製なので、まずは1本バラし、組込みできるか確認する。
上の部品が下のカートリッジキットに入れ替わる。
重量を測定してみると、カートリッジキットは約735g。
取外すノーマルパーツは約1075g。
カートリッジキットに入れ換ると、約680gも車重が軽くなる。
リバウンドスプリングとオイルロックピースは再使用するので仮組みしてみる。オイルロックピースはノーマルへの組込みと異なりガタが多い、リバウンドスプリングが接触する部分は削れてしまいそうだ。
スプリングをセットしてみる。フォークキャップとスプリングの間に、かなりのクリアランスがある。いいのか? 組みやすくていいけど。
組込み。普通に組めるが、ボルトが共回りしたのでスプリングとフォークキャップを組んで締め付け。なお、シール、スライドメタルは、
前回の交換から間もないので再使用。
フォークオイルは、広島高潤5Wにベルハンマーを7%添加する(つもりが、目盛りを読み間違えて約8%)。アタックX1は分離してしまうが、ベルハンマーはよく馴染む。ちなみに、広島高潤5Wは付属のモトレックス5Wより柔らかいが、ベルハンマー添加で多少は近づくはず。
左:攪拌前 右:攪拌後
油面指定は165mm(ノーマル139mm)なので、油面調整器を調整してフォークに突っ込んでみると、調整器のノズルがスプリングシートにぶち当たる…
出やがった。イタ公クオリティ。調べてみると、153mm付近にスプリングシートがある。特殊な調整器があるのだろうか?仕方ないので油面を145mmで調整するが、量が不明なので、フォークオイルを少しずつ投入しながら、ある程度の量を調べて次回に活かす。すると、概ね450mℓだった。
特工によるエア抜きは楽ちん。
1本目を放置しつつ、2本目も部品入替え。
基準セッティングは取説に記載されているが(英文)、プリロードは全抜きから6回転、減衰力は全閉から15クリックっぽい。それに合わせて車体に組付け。地味だ…が、V-Strom650にはよく似合う。
完了。しかし、近づいてよく見ないとノーマルそのもの。
乗車1Gでのフォーク沈み量を測定すると約23.5mmだった。ノーマルに比べて、約7.5mm程ストローク量が減っている。シングルレートスプリングに変わったので当然か?
この仕様で走行してみるとややゴツゴツ感があるので、伸側減衰力を1クリック抜いてみるとこれが絶妙。細かいギャップの吸収性が格段に良くなり、
タイヤ交換で発生した硬質な感じが無くなった。ハードブレーキング時のストローク感もいい。ノーマルはズコッと入ってしまい姿勢変化が早すぎてイマイチだったが、落ち着いた感じのストロークとなりコーナー進入時も安心感がある。一番好印象なのが高速走行。抜群の直進安定性で、継ぎ目等のギャップ通過時の衝撃も激減。長距離走行での疲労が大幅に少なくなるだろう。リアの動きも良くなっている。フロントが上がったことで、リアの荷重割合が増えたためと思われる。
反面、アクセルオフのみでコーナーリングする場合に重ったるくなった。これはフロントが上がったことでキャスターが寝てしまったことに加え、シングルレートスプリングになったことで、アクセルオフのみでのフォーク沈み量が減ったからだと思われる。アクセルオンオフのみで峠を流すことが気持ちいいV-Strom650だけにこの点は残念だ。
現状では、プリロードを基準セッティングから1回転、伸側を基準セッティングから1クリック抜いている。これで乗り心地と軽快なフィーリングをある程度両立できた。
色々雑な部分はあるものの、高性能な製品だ。リアの調整機構と合わせれば、かなりのセッティング幅となるだろう。注意点としては、オンロード向きのセッティングとなっているので、悪路走行(特にダート)では固すぎることだ。この場合は減衰力を抜いた方がいい。この辺りはノーマルのオールラウンド性に劣る。もっとも、4mmのヘキサゴンレンチを車載工具に追加すればいいだけだ。
何れにしてもフォークは見た目じゃない。中身だな。なお、油面の件は販売代理店である、松本エンジニアリングに問合せ中だ。